投稿番号:050/タイトル:風の三郎岳
推薦場所:高根町風切りの里 蕎麦処「北甲斐亭」付近
推薦理由/ 「風切り」とは防風林のことである。この辺りは「風切りの里」と呼ばれ、昔から八ケ岳颪が強く、村人は様々な工夫で風と闘ってきた。防風林もその一つである。その昔は風切りの松の1本も切れば一族郎党皆打ち首であったという。ところが太平洋戦争末期、松の根から採れる油で戦闘機を飛ばそうというので大木が何本も伐採抜根された。いわゆる「松根油」である。幸い現在も風切りの松の列は生き残って、豊な農村風景を構成し往時の面影を伝えている。八ケ岳の峰の一つが「風三郎岳」だと「甲斐叢記」に伝わっている。この里では風三郎岳からの颪があまりに強いので「風の三郎社」を祀った。今でも「風の三郎社」は土地の氏神神社の境内に移されて健在だ。この里にはかつて晴天の祈りを日吉神社に、雨乞いを八ケ岳権現社に、風除けの祈りを風の三郎社にお参りする「三社まいり」という風習があった。宮沢賢治が韮崎に住む生涯無二の親友「保坂嘉内」からこれらの話を聞き、「風の又三郎」を書き上げたのではないかという話がある。今この里にはそのロマンを求めて風の三郎社を訪ねる人が少しずつ増えているという。風切りの松に遊歩道があるが、歩いていると「どっどどどどうど、赤いりんごもふきとばせ」という又三郎の声が聞こえてきそうである。この場所を全ての八ケ岳ファンと賢治ファンに推薦したい。
推薦地の最適季節・時刻/ 通年 賢治ファンなら二百十日の頃歩いてもらいたい。
写真撮影日/ 2005年3月21日
推薦者/ 多賀純夫(北杜市)